八幡西区上の原一丁目20番
凉天満宮
昔、暑い日のこと。一人の旅人が、上津役の坂をのぼりきると、小さなお宮でひと休みしました。そこには松の木が、境内に涼しい陰を作っていました。
旅人は腰をおろし、汗ににじんだ帯を緩め、財布を取り出して、松の枝にかけました。「なんとありがたい木陰だろう。独言をいって弁当を食べました。ふと足もとを見ると、こぼしたご飯粒を蟻たちが運んでいます。その働きぶりを感心しながら見ていました。
そのうち少しねむくなり、ひとねむりしました。疲れもとれ、出発しました。旅人は長崎の商人で、京都に行く途中でした。船に乗りましたが、船の中で財布を松の枝に忘れたことに気づきました、しかし、どうすることもできません。
そこで、あの蟻たちのように働けば、先のことはなんとかなるだろうと思い、お金のことはあきらめました。商人は用事をすませ、長崎に帰ることになりました。もと来た道を歩き、お宮まできて、ふと松の木を見ると、財布が枝にかかっています。自分の財布です。中をみると、もとどおりの大金が入っているではありませんか。
商人は喜び、松の木に何度も頭を下げ、神さまにも厚くお礼を言って帰って行きました。それからこの松を「金かけの松」と呼ぶようになったということです。その商人が神さまへのお礼として作った石の鳥居には、「凉天満宮」という名前が書かれています。