八幡東区熊平あたり
帆柱山
むかし、帆柱山の麓の村に一軒の宿屋がありました。
ここの主人は強欲で人使いが荒く、お手伝いさんは長続きしませんでした。気立ての良いお手伝いのこてつだけは、辛抱して働いていましたが、ある時働きすぎか寝込んでしまいました。
ところが、宿の主人はこてつを物置に押し込み、食事も与えません。こてつはこの仕打ちにもうこれまでだと思い、主人ののどに噛み付いて殺してしましました。
それから何十年の後、帆柱山にこてつ婆という化け物が住み、村人を悩ますようになりました。
一人の武士がこてつ婆退治に出掛けて、白髪のこてつ婆を切り殺しますと、こてつ婆の姿は消え、数本の白髪が残されました。武士はその白髪を記念に麓の宿まで持ち帰りました。
その夜、武士が寝ていると、持ち帰った白髪はこてつ婆の姿に変り、武士ののどに噛み付いて殺してしまいました。
この出来事を覗き見た一人の僧は、あまりのすさまじさに驚いて、一生懸命念仏を唱えると、こてつ婆は姿を消してしまいました。
それ以来、村人はこてつ婆をまつって、毎年髪の毛を供えるようになったということです。
今でも、その墓は帆柱山の杉の陰に埋もれていると言われています。